目の前に差し迫った食料危機

2022年5月21日

昨年までは「地球温暖化」による干ばつ(日照り)によって、小麦を中心とした世界的な穀物不作問題を長期的な問題として捉えていました。ところが今年2月,突然のロシアによるウクライナ侵略は、世界的な小麦需給関係を一変させてしまいました。世界の小麦輸出はロシアとウクライナで30%を占め、主にアフリカや中近東で消費されています。日本の小麦輸入国はアメリカ,カナダ,オーストラリアでほぼ100%を占めていますので日本は大丈夫と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。地球規模で小麦も動きます。ロシアやウクライナから輸入できなくなった国は、アメリカ,カナダ,オーストラリアから買い求めますので、小麦価格は高騰していきます。

 

今年から来年あたりはまだ値上げだけで済み小麦そのものは確保できると思いますが、2年後には入手すら難しくなることが十分に予想されます。日本で消費する小麦の90%は輸入に頼っており、国産小麦は僅か10%しかありません。これは将来の話しではありません。目の前に差し迫った食料危機の始まりなのです。

 

そのために私たちのできることを考えてみましょう。

意外なのは食品ロス(食べ残し)を減らすことです。日本全体の年間食品出荷量は約8,300万トン→その内33%(2,800万トン)が食品廃棄物です(大根の皮なども含まれます。)→さらに3~5%(30万トン)がコンビニから出る食品廃棄物です。何と輸入及び国内栽培した食品の3分の1は廃棄されているのです。便利さの追求から生まれた結果です。昔、マクドナルドでは予め作っておき、一定時間が過ぎて売れ残ったハンバーガーはどんどん捨てていったことを思い出しました。食料危機が現実となった時点で、国主導で一大キャンペーンが張られると予想します。

 

パン屋としてできることは、小麦に変わるパン用穀物粉を使いこなす技術を獲得しておくことです。具体的には、米粉、大麦粉、オーツ麦粉、大豆粉、トウモロコシ粉などの穀物粉です。うまく利用すれば、食物繊維の豊富な健康パン用材料として使うことができます。日本の農家さんにとっては、耕作放棄地の復活という面から日本農業の再生を促す追い風にもなります。逆風を受けることによって新たな道を切り拓く、日本人の逆境を克服する底力を信じています。

 

「地産地消」による国内食料自給率100%が食料安全保障の面からも重要な政策課題となってきます。日本人一人ひとりの自覚と英知を結集すべき時です。だれかが何とかしてくれるではなく、私達一人ひとりが何をできるのかを考え、実行すべき時です。今から動かないと取り返しのつかない事態に陥ってしまいます。

 

 

 

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