酵母発酵技術

 パンは、味噌や醤油,お酒,ワイン,チーズと同じ発酵食品です。お客様から「どのような酵母を使っていますか?」とよく質問されます。パンの発酵には酵母の生命活動(アルコールと有機酸の生成)だけでなく、酵素によるでんぷんや蛋白質の分解も同時に行われることが必須条件(でんぷんの分解;糖化)なのです。なぜならば酵母は単糖のブドウ糖と果糖しか体内に取り込み栄養源として利用することができないからです。それゆえ『パンの発酵=”並行複発酵”』なのです。次に示す図が、パン発酵の本質を物語っています。

 

 

 

パンの発酵に関わる技術情報を以下に列記します。
間違いや異論があれば、コメント欄へご指摘をお願いします。

 

製パンのKey技術として、”酵母発酵=微生物の生命体活動”を理解することは重要です。酵母発酵によって、酵母の生成物(排泄物)の一つである二酸化炭素ガス(CO2)によって生地膨張が進むことは皆様がよくご存知のことです。また同時にアルコール(エタノール)も排出しますので、アルコール発酵といわれる所以です。しかし酵母は、小麦タンパクやでんぷん、砂糖を直接すぐに食べることはできません。何段階も分解酵素(消化酵素)によって分解されていきながら(多糖類→二糖類→単糖類)、単糖類のブドウ糖や果糖になって初めて、酵母の体内に取り込まれ消化されていきます。これを”糖化”とよびます。また小麦タンパクも一部は消化酵素によってアミノ酸に分解され、酵母の餌となりその排泄物が旨味や芳香を醸し出す各種有機酸やエステル類を排出します。このように発酵と糖化が同時に進行する過程を”並行複発酵”とよびます。パン酵母の発酵はこのように複雑ですが、パン生地の中で酵母(や分解酵素)がどのように生命活動をしているのかを考えながらパン作りを行うことが、”美味しいパンを作る正しい道”だと信じています。

 

酵素について補足説明をします。酵素は酵母や菌(代表的な菌;麹菌,こうじ菌)から分泌されるものと食物酵素と呼ばれる外部から取り込まれるものがあります。その種類は3,000~4,000種類といわれ、でんぷんやたんぱく質、脂質を分解し、人体に有用な必須アミノ酸やコハク酸を生み出し、旨味成分として深みのある芳醇な味わいや風味を醸し出します。様々な酵素や菌類を排除したパン用酵母(イースト菌)には、このような働きをする酵素も少ないようです。

アンリエットでは人工純粋培養酵母のイースト(パン酵母)は、一切使用していません。パンの種類によって最も好ましい発酵状態が得られるように、常時4~6種類の自然培養酵母を組合せ・使い分けています。

 

①麹菌系天然培養酵母
②自家製フルーツ酵母・・・ブルーベリー,りんご,レーズン,いちごなど旬の果物を利用
③カスピ海ヨーグルト酵母・・友人から譲り受けたカスピ海ヨーグルトを15年間種継ぎ使用
④ライ麦サワー種酵母・・・北海道産のオーガニックライ麦粉が優れた発酵力を発現します。
⑤酒種(酒粕)酵母・・・アンリエットの目指す味わいと方向性が異なるため現在は不使用

 

 

△天然酵母パンと化学培養イーストパンの比較

△製パン用酵母の分類

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